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140文字SS:HUGっと!プリキュア【14】 1.はぐっと小咄 なぞ肉は偉大なのです/かおす 「カップヌードルなのですー!」 「謎肉祭りはまだでしょうか」 「ルールーも謎肉ですか」 「シーフードヌードルのエビも捨てがたいのですが、なぜ、エビ祭りはないのでしょう」 「…正体がわかってるからじゃないですか?」 「謎ネギ祭り...」 「ありません!」 2.はぐっと小咄 皆さんお大事にお過ごし下さい/かおす 「えみる、今日はことのほか寒いですね」 「昨日大寒だったのです!」 「それは?」 「一年で一番寒いといわれているコヨミなのです」 「おおさむ..」 「ダイカンです」 「…5分…」 「違います」 「どうやら呼ばれたようだな」 「呼ばれてないから」 「どちらかってーと暑苦しーオヤジっすねー」 3.はぐっと小咄 ついんらぶ/かおす 「カップヌードル」 「はいー? 昨日やったばかりでは?」 「3分間待つ...ボンカレーとどっちが先でしょう」 「3分と言えばウルトラマンなのです」 「ボクシングの1ラウンドもですが」 「私から始めるかルールーが言い出すかでこんなに変わるのですね」 「3分たちました」 「いただくのです!」 4.はぐっと小咄 やっぱどっか残念な人/かおす 「フリッターと聞くとイルカを連想します。なぜでしょう?」 「イルカですかー?」 「それは私から説明しよう」 「トラウム」 「あれは私が少年だった頃、フリッパーというイルカが出てくる海外テレビ番組が…」 「そんなくだらないネタで貴重な字数を..」. 「わんぱくフリッター^^」 「帰って下さい 5.はぐっと小咄 なんでやねん/かおす 「仕方ありません。ルールー、あと2週間頑張るのです!」 「そうでなくても出過ぎです」 「無敵のコンビなのです!」 「ふたりともボケですが」 「えー? そうだったんですかー?」 「なんでやねん」 「…だめですねー」 「はい」 6.はぐっと小咄 とける季節/かおす 「チョコがべたつく季節になったのです」 もぐもぐ 「ルールー,上手ですね」 「銀紙がついていますので」 「…ぎんがみ」 「違うのですか?」 「いえ,そーなのですが これがこう うまく…」 「こーやってはがすといいですよ」 「...これなら大丈夫なのです!」 「ほっぺた…は黙っておきましょう^^」 7.くらいあすしゃ2 おとなも夢を見るのだよ/かおす チャラリートとダイガンとパップルなんだがね ..オマージュか 世代が知れるね ともに永遠の... 逆転いっぱつまんと行きたいところだね …君は昔からそうだったな 8.【競作2022】春のSS祭り2022:やる気かごはん はぐっと一発! やる気のごはん/かおす 「ルールー、お茶碗に山盛りですね( ̄▽ ̄;)」 「やる気のごはんです」 「インチキなのです!」 「こっちのお皿に山盛りのごはんは?」 「ごはんのやる気です」 「じゃあ、このおひつからこぼれんばかりのごはんは」 「やるきにあふれた…」 「もういいのです!」 9.【競作2022】はぐっとごはん/かおす 「なんかお祭り本番になったら疲れてしまったのです」 「えみるもですか」 「どうしても安易になるのです」 「そういわれても………システムエラー」 「ふー。もう5回目でしょうか」 「打ち合わせではここは、前科五犯というはずでは」 「却下なのです!」 10.【競作2022】春のSS祭り2022 はぐっとやゆき/かおす 「えみる なんかみんなでキーワードを連呼すると楽しそうですよ」 「はいー? じゃあ、やる気なのです! さ、はな先輩!」 「え? やる気だよー! ほまれ!」 「やる気ねえ..。はいさあや」 「やる気です。ハリー」 「わ、わいか? やる気やで はぐたん」 「やゆきー」 「きゃわたーん♡」
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ねぎぼうの140文字SS【7】 1.ラブせつで『君の傍』/ねぎぼう サウラー君の傍受したというリンクルンの通信データというのはこれね。 “せつな!今補習が終わったよ” “もう家に帰っているわよ” “ほんと?ごめん……” (ノイズ) インフィニティの話はさすがにしていないようね。 でも、サウラー君いい仕事してくれたわね。 特定できたわ。あの子たちの住家も…… 2.ラブせつで【 無理しちゃって 】/ねぎぼう 大会以来久しぶりにせつなとラブに出会った美希。 「せつなにはね、四つ葉町の楽しい思い出をたっくさん持って行って欲しいんだ」 ラブの明るすぎる笑顔。 「この街をよく見ておきたいって言ったら付き合ってくれたの。悪いことしたわ」 名残惜しさと二人でいる喜びを申し訳なさで隠す。 (無理しちゃって) 3.ラブせつで『人生で一番』/ねぎぼう 突然出逢って、探していた夢が見つかった。 再び出会えて、一番美味しいドーナツと幸せの素を知った。 本気で心配してくれた。許してくれた。やるべき事を知った。 そして、苦しんでいるのが……貴女だった。 何も出来ない?いや、そんなことない! 全てをかけるよ。 人生で一番好きになった貴女だから。 4.ラブせつで『誰にも渡さない』/ねぎぼう “誰にも渡さない……” 「ピーチはん、昨日はえろううなされとったで?大丈夫なんか?」 「……大丈夫!元気一杯だよ」 「やっぱり、パッションはんのこと……」 「わかってる。せつなの夢だもん。応援するのが家族でしょ?勿論タルトの夢も、だよ!」 (ピーチはん、家族やったらそうなんやろかなあ) 5.ラブせつで『未送信メール』/ねぎぼう 『ラブ、補習お疲れ様(^-^)』 せつなからメールが入っていた。 返信を打ち込んでいると、 「ラブ!」 「せつな!待っててくれたんだ」 ―― (そろそろスマホかなあ) 未送信メールがあることに気付く。 『ありがとう(^O^)すぐ帰るね!せつなだいすき』 あの日の思いもメールボックスに残ったまま。 *6はこの続きです。 6.ラブせつで【 もう会えないひと 】/ねぎぼう この未送信1件が気にかかったまま何日かが過ぎた。 そんなある日、けりをつけるように最後の送信ボタンを押した。 ―― 「ただいまー!あいぽん5にタダで機種変できたんだ」 「ラブ!すぐ帰るって言っていたわね?」 「あ!ごめん、そのまま送っちゃってた」 (今は、もう会えないひとじゃないんだ) 7.ラブせつで『ちょっと黙って』/ねぎぼう 「冷蔵庫の限定秋栗ドーナツ、まさか?」 「私、食べていないわよ。名前書いてたんでしょう?」 「前に読めなかったって言って食べちゃったじゃん」 「読める字書かないと」 「んも~」 「ピーチはんもパッションはんもそないに……」 「タルトはちょっと黙ってて!って、その口元に付いてるのは何?」 8.ラブせつで『迷子のお知らせ』/ねぎぼう “迷子のお知らせです” 「ママー!」 「ありがとうございます」 「よかったね」 ―― 「あたしも小さいころ迷子になっちゃってね。優しいおねえさんが一緒に探してくれたんだ。恩返し、かな?」 「あの子のお母さん、そのおねえさんじゃないのよね?」 「うん、でも、応えられるような気がするんだ」 9.キュアミューズ(黒)×キュアエース/ねぎぼう キュアミューズ(黒)とキュアエースがフュージョンしたら? ―― 「もう少しで5分よ」 「ミュースショット!ばきゅ~ん!1、2、3、フィナーレ!」 ”ラーブグーグー” ネガジコチューは浄化された。 キュアミュースはロックを外す。 カチャ、プシュー! 「ぷはぁ~」 マスクの下から汗だくのア久里の笑顔。 10.ラブせつで【 それ、半分ちょうだい 】/ねぎぼう ラブが最後の1個というカボチャのケーキを私にくれた。 じっと見ているから 「それ、半分ちょうだい」 とでも言うのかと思って割ろうとしたら、 「ダメ!そのケーキはね、二人で半分こして一緒に食べたら幸せになれるんだよ。 だから、これは持って帰って……待ってる人とね」 優しい顔で、言われたの。 ※カボチャのケーキはぴかりが丘のアレです。
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SS投稿方法 このページではダンゲロスSSRaceに投稿する、SSの投稿方法について説明します。 SS投稿先 SSはGK(ゲームキーパー/ゲーム進行役)宛にWebメールで直接送信してください。 アドレスは以下の★を半角アットマークにしたものです。 dangerousrace★gmail.com 投稿は下記の【テンプレート】を必ず用いるようお願いします。 ただし【本文】に関してはテキストファイルなどでメールに添付して送っていただいても構いません。 本人が書いたか否かにかかわらず、幕間SSで起こったことを踏まえた投稿が可能ですが、すべての投票者が幕間SSに目を通すわけではないので、 一体どの幕間SSを採用したのか その幕間SSで重要なこと(一行程度) をテンプレートに沿って明記してください。採用していない場合はテンプレートの採用する幕間SS欄を空白のままで提出していただいて構いません。 投稿されたSSには、一日以内にGKが確認メールを返信いたします。 一日以上経過しても返信が返ってこない場合は、SSRaceスレッドにご連絡ください。 SSの投稿時間も、この返信内容で確認可能です。 (投稿時間は、同数得票の際のルールにのみ関係します。詳しくはこのページの下にある【同数得票について】をご確認ください) 【テンプレート】 件名:【SSRace本戦SS】【キャラクター:○○】 本文: ◆ハンドルネーム ◆採用する幕間SS ○ () ◆本文 記述例 件名:【SSRace本戦SS】【キャラクター:サンプル花子】 本文: ◆プレイヤーA ◆採用する幕間SS 7 (壊れた運動靴の代わりに長一郎のメロンパンをもらう) 11 (山田とライバル化) ◆本文 あーだこーだして私が勝ちました 内容修正について 投稿されたSSは、投稿期間終了後に一斉に公開されます。 投稿期限前であれば、SSの追記や修正は自由に行うことが可能です。 些細な誤字や言い回しの修正もその都度応じますので、遠慮なくお願いします。 ただし、単なる修正以上の大量の追記などに関しましては、そのSS投稿時間は、その追記が投稿された時点として扱うことになります。(投稿時間は、同数得票の際のルールにのみ関係します。詳しくはこのページの下にある【同数得票について】をご確認ください) 最初に投稿したSSを破棄し、別のSSを投稿することも問題ありませんが、こちらについての投稿時間の扱いも、上と同様です。 【ペナルティについて】 投稿期間を超過したSSは、その時点で失格となります。 参加者の皆さんは、可能な限り日程に余裕を持った投稿を心がけてください。また、短期間のキャンペーンであるため、いかなる理由でも遅刻は認められません。 【同数得票について】 投票結果が同数であった場合には、投稿の早かったプレイヤーの勝利となります。 SSの投稿を終えたら 他のプレイヤーの試合SSを読んで、面白かった作品に投票しましょう!投票の仕方については次のページ【投票方法】をご確認ください。
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午後8時。 演習の参加者によるREXの見学は、無事に終了した。 僕は予定通りに簡単に機体や性能についての説明と、進捗状況についての説明をした。 いよいよあと数日でREXが完成する。 見学が終わり皆が立ち去った制御室でぼんやりとその機体を眺めていると、意外な人物が部屋に入ってきた。 「本当にすばらしいな、博士……これがあれば革命だってできそうだ」 「それは……どうも」 ドアに背を預けて立っているのは、リキッドスネークだった。 そのまま近寄り、なれなれしいともとれるような気さくな態度で僕の肩を叩くと、正面にあるREXに視線を向けた。 「それも全ては皆さんの演習のデータにかかっています……よろしくお願いします」 感慨深そうな視線でREXを眺めるリキッドにあらためてそう言うと、彼は唇の端を引き上げ笑って言った。 「ああ、そっちの方は任せてくれ。博士は余計な事を考えずにこいつの完成を目指せばいい」 言いながら自然な仕草で大きな手を差し伸べる。僕はそれを握り返した。 ウルフの件も気に掛かっていて彼に対する印象はずっと悪かったが、少し改めた方がいいのかもしれないと僕はぼんやりと考えた。 「発案者は博士の父親と聞いたが?」 「ええ、友人から発想を得て設計し、ずっと作りたいと思っていたみたいで……結局実現はかないませんでしたが」 制御室から出て階段を降りながら話していたら、リキッドが振り返った。 視線の先にはREXがある。 「子である博士はこれをもって父を越えた、というところか……実に素晴らしいな」 「大げさ過ぎますよ」 過剰すぎる賛辞に気恥ずかしくなり、僕はそう返すのが精一杯だった。 彼のその言葉に込められた真意を知ったのは、それからずいぶん後の話だった。 「こんばんは、ウルフ」 堅苦しいスーツを脱ぎ捨てていつもの場所に行くと、ウルフの姿が見えた。 薄暗い洞窟に立つ彼女の足元には、ウルフドッグの子犬がいる。 「また兄弟と喧嘩でもしたのか、噛まれて怪我をしていたんだ」 子犬の後ろ足には包帯が巻いてある。彼女が手当てしたようだった。 「そうやって彼らは勉強するんだよ、仕方ない」 餌を持ってきた僕を見上げて尻尾を振る仕草が可愛い。 餌を入れたトレイを置くと、夢中で食べ始めた。 一生懸命食べているその背中に触れると、背骨が少し浮いているのが分かった。 「痩せてるな……他の兄弟に負けて、あまり食べ物にありつけないのかな」 強くないと、生きていく為の知恵が無いと淘汰されるのは当然の事だったが、僕は見捨てる事が出来ずにいた。 「博士は犬が好きなのか?」 「好きだよ、君は?」 見上げて訊くと、晴れた空の色みたいな青い瞳が僕を捕らえた。 「私は……」 何かを言い掛けた彼女の声は、突然鳴り響いたサイレンにかき消され、夜闇に消えた。 サイレンは10秒ほど鳴り、嘘のようにぴたりと止まった。 施設内からは館内放送も含め、何も聞こえてこない。 嫌な胸騒ぎがした。 「なんだろうね、今の……確かめてくるよ」 近くの倉庫に入り、僕は内線電話のボタンを押した。 警備室も研究所も……どこへ掛けても応答はなかった。 だんだんと心臓が高鳴っていく。 施設内で何か異常が起きている可能性は、決して低くはなかった。 「……ウルフ、ちょっと様子を見てくるから君はここにいてくれないか?」 僕は倉庫にウルフを残し、研究室へと向かった。 僕の研究室には、試作品のステルス迷彩がいくつかあった。 何かあった場合、役に立つかもしれない。 内心恐くてたまらなかったが、気持ちを振り払うように僕は走った。 少なくともウルフの安全だけは、何が起きても確保したかった。 研究室のある棟は、不気味なくらいシンと静まり返っていた。 ドアが開くと……目の前に見慣れた大きな背中があった。 「ああ、博士……待っていたぞ?」 リキッドの向かいには、研究所のメンバーが何人か集められていた。 皆、覆面を被った兵士に銃を向けられて青ざめている……すぐには事情を飲み込めなかった。 「あんたは一番大事な人物だからな……他にアレを完成できる人物はいないだろう?」 茫然と立ち尽くす僕の頭に、何人かの兵士が一斉に銃口を向けた。 銃を向けられるなんて初めての事で、その迫力に負け、足がすくむ。 「変な真似はするな……あんたに選択件はない」 頭から血の気が引いていく。 兵士に怒鳴られるままに、僕は両手を頭上へと挙げた。 「……他の研究室のメンバーは?」 「全員無事だ。他の場所でおとなしくしてもらっている」 リキッドの手が、僕の肩を叩いた。 「なぜこんな事を……何が目的なんだ」 「革命だよ……REXを使ってな」 「見学の時に説明しただろう、あれは……そんな脅威にはなり得ないぞ」 リキッドは鼻で笑い、僕の両肩を掴んで椅子へと座らせた。 「あんたはそんな事、気にしなくていい」 リキッドが笑って言ったその時、彼の肩越しに研究室のドアが開くのが見えた。 そこに立っていたのは、ハンドガンを構えたウルフだった。 ドアを振り返ったリキッドに、一瞬の隙が生まれた。指を伸ばすと彼の腰に下げられた銃に触れる事ができた。 チャンスは一度しかないだろう。 僕はそのままグリップを握り、ホルスターから銃を抜いて自分の手の中に収めた。 「おいおい……そんな物騒なものを持って、どうする気だ?」 リキッドは僕が向けた銃口を見て一瞬刮目してみせたが、冷静だった。 ゆっくりと僕に近付き、間合いを狭めてゆく。 「近づくな! そのままそこで膝をつけ!」 安全装置を外すと、しぶしぶといった様子で、ようやくリキッドは両手を挙げて膝をついた。 僕は銃を持った事は無かったが、扱い方くらいは知っている。 銃だって機械だ。 扱い方さえ間違わなければ、僕でも人を傷つける事くらいはできるだろう。 「やれやれ……俺を殺す気か?」 銃口をつきつけているにもかかわらず、リキッドの唇からは笑みが消えていなかった。 「それは、君の態度次第だ……」 冷たい汗が僕のこめかみを伝っていくのが分かった。 僕は特別な訓練を受けたわけじゃない。 無力化した彼をどのように扱っていいかなんて、分からなかった。 その鉄の固まりは予想していたよりずっと重く、グリップは手に吸い付くように感じられた。 リキッドが何かを叫ぶのと同時だったと思う。 グリップを握りなおそうとした次の瞬間、僕の左手は銃を構えたまま高く持ち上げられていた。 腕を捻り上げられ、僕の手から銃が離れる。 顎を下から押さえられ視線を向ける事も出来ないまま、僕はバランスを崩して床へと倒れこんだ。 強く打ち付けた背中のせいで、息がができず、咳き込んで目を開くと……見上げた先には、僕を見下ろすウルフの顔と、銃口があった。 食堂で訊いたCQCの話が頭を過ってゆく……絶望感からか、僕の体から力が抜けていった。 「やれやれ……手間のかかる博士だ」 リキッドはそう言いながら立ち上がり、金の髪を指で梳きながら僕を見下した。 そのまま僕は、ウルフに銃口をつきつけられながら医務室に向かった。 打ち付けた背中と頭を医者に診てもらう為だ。 軽い脳震盪を起こしているのか眩暈がしたが、歩く事はできた。 「おかしな事は考えるな……」 エレベーターに乗り込む僕に、低い声でウルフは言った。 「何で君は……こんなテロに参加する気になったんだい?」 言いながら、声が震えてくるのが分かった。 「……博士には到底理解できない事だろう……私はずっと博士の知らない場所で、博士の理解出来ない価値観で生きてきたんだ……それだけだ」 エレベーターの鏡に、ウルフの顔が映る。 意志の強そうな青い目は、曇りなく僕を見つめている。 「僕は……君の事、何も知らなかったんだね」 情けない事に、涙で視界がぐにゃりと歪んだ。 思考が交錯して何がこんなに悲しいのかは言葉にできそうもなかったが、涙は止まらずに頬を流れて落ちた。 「それは……博士のせいじゃない」 白いハンカチが差し出された。 受け取って手の中に収めると、暖かいウルフの体温が感じられた。 「博士は知らなくていい事だ……これからもずっと」どこか優しいウルフの声に、僕はまっすぐに彼女を見つめ返す事もできず、目を閉じた。 「なんだ、やけに長い惚気話だったな」 脱力するような感想を言いながら、スネークはサンドイッチを手にとって齧った。 「君が聞きたいって言うから話したんだろ?……っていうか、それは僕の分だろう?」 「いいじゃないか、少しくらい。せっかくのクリスマスなんだし」 「……クリスマスは関係無いよ、スネーク」 あのタンカー事件から1年程が過ぎた。 未だ指名手配中のスネークは偽名を使い、僕と一緒にニューヨークで暮らしている。 男ふたりのクリスマスイブなんて目もあてられない悲惨さだからサンドイッチと安いラム酒で質素に食事を楽しんでいたんだけれど、気付いてみればそのほとんどはスネークの胃袋に収まっていた。 「しかし、ずいぶん端折って話してるんじゃないか?」 彼女と肉体関係があった事等については伏せて話をした為、長いわりにはあっさりとした話になった。物足りなかったのかもしれない。 訝しげに訊いてくるスネークに、僕は片手を上げて制止した。 「その質問はノーコメントにさせてもらうよ」 ラム酒を一口飲んで窓の外を見ると、雪が降り始めていた。 「今夜は積もりそうだな」グラスを片手に窓の外を見下ろすスネークに、僕は質問をした。 「……なぜ、ウルフの事を訊こうと思ったんだい?」 彼女が亡くなったあの日から、一度も言葉には出さなかったが僕達の間ではずっとタブーになっていた話題だ。 スネークは気まずそうな笑みを唇に浮かべ、ソファーに横になっている僕を見下ろして言った。 「ずっと訊きたいと思っていたが、訊けなかっただけだ」 「……彼女の命を奪ったのが君だからかい?」 「……そうだ」 窓に視線を移してグラスの中の酒を飲み干すスネークの横顔を見ながら、僕は答えた。 「彼女が死ななかったらって考えた事は何度もあるよ…でもシャドーモセスを生きのびた彼女は、今まで生きてきたみたいに何度もいろんな戦いに参加して……結局亡くなったかもしれないね」 ラム酒を飲み干して、グラスをテーブルに置くと、からりと音を立てて氷が崩れた。 「終わりを探して銃を背中につきつけられながら彷徨うようなそんな生き方、幸せだとは思えないよスネーク」 「オタコン、俺は……」 何かを言おうとしたスネークの言葉を、僕は遮った。 「この話はこれでおしまいだ。それよりメリルに電話の一本でもしたらどうだい? あんまり放っておくと、そのうち愛想尽かされるよ?」 背中を押して無理矢理リビングから追い出し、僕は窓から外を眺めた。 視線を廊下に移すと、スネークが電話機のダイヤルを押すのが見えた。なんだかんだ言いながら、スネークはメリルが好きなんだ。 ラジオからはクリスマスソングが聞こえる。 しんしんと降り積もる雪を見ながら、僕はシャドーモセスとウルフ思い出していた。 天国にも雪は降るんだろうか……。 そんな事をぼんやりと考えながら、僕はラム酒をグラスに注いで口をつけた。
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【初出】 禁書SS自作スレ>>348 ――わらっていた。 溢れる感情とともに涙を流す聖女(ヒロイン)を、私はただ見ていることだけしかできなかった。 三年間。私は地下に潜り知識を蓄えた。 あの子を救う術を探し、あの子を救うことだけを目標とし、あの子のことだけを想い続けた。 その結果として、世界最大宗教であるローマ正教を敵に回したが、それさえもあの子を救うという目的のためなら些細な事であった。 探求すること。 私は、錬金術師としてのその使命を全うし、ひとつの解を手に入れた。 魔術師としての到達点のひとつである『大いなる秘法(アルス=マグナ)』さえも踏み台にして、その解に導くための手順を整えた。 全ては順調で、万事問題なく事を進めていた。 吸血殺しを手に入れ、王者の術(アルス=マグナ)を完成させ、あとは人外のモノを捕らえるのみという段階になり、それは起こった。 それは、この三年間に経験したことの中では取るに足らないような瑣末な出来事であったはずだった。 あの子が自ら私のもとに出向き、結果として僥倖と呼ぶべき事態のはずだった。 ――そして、あのこはわらっている。 私は、その笑顔をしっている。 あれは過去、私に向けられていたもの。 そう、しっている。かつてのあの子はいつもその笑顔を浮かべていた。清純にして純粋な、子供のような笑顔。 それは、”ただひとり”の主人公(パートナー)に向けられるもの。 ――わらっている。 今代の主人公(パートナー)にわらいかける聖女(ヒロイン)を、私はただ見ていることだけしかできない。
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SSその1 「次なる試合は、王女様。互いの実力、経験が拮抗した者同士の対戦をあつらえましてございます。まだ地位も名声もない、言わば……新人戦でございますかな」 五賢臣がひとり、老いた男は頭を下げる。 グロリアス・オリュンピア初戦の組み合わせは、五賢臣のメンバーそれぞれの様々な——そう、実に様々な思惑により決定されている。 全ては、王女に極上の能力戦を堪能させるための配慮だ。 「心ゆくまでお楽しみいただければ幸い」 「ええ、胸が躍るようです」 色素の薄い、さらさらと絹糸のような髪をした少女は、穏やかに目を細める。その心の内に、燃えたぎるような情熱を隠して。 ◆◆◆◆ グロリアス・オリュンピア大会本部、選手控え室。パイプ椅子に腰かけたモッズコートにジーンズ姿の青年と、横に控えて座る黒髪ボブヘア、シンプルな白のブラウスと紺色のスカートの少女の姿があった。どこか無感情に見える目がふたりの共通の印象だろうか。 ごく平凡な見た目の青年は、やや顔に緊張を見せていたが、隠す様子はない。本人は漆黒の兜で自分の顔が覆われていると信じているからだ。設定では目のところは赤く光る。そういうのが格好いいと彼は思っている。 「暗黒騎士ダークヴァルザードギアス様。試合時間となりました」 やがてノック音とともにドアが開き、室内の少女とうりふたつの顔をした少女が現れる。サンプル花子。量産型戦闘用美少女である。室内の紺スカートの少女もまた。 「ご案内いたします。どうぞこちらへ」 『暗黒騎士ダークヴァルザードギアス』は、立ち上がり、軽く深呼吸をした。そして、傍の少女に向け言葉を放つ。 「アナスタシア」 少女は……アナスタシアは、じっと青年を見上げる。 「我が名を呼べ」 「はい。暗黒騎士ダークヴァルザードギアス様」 「……うむ」 ひととき、ふたりの虚ろな目に、火花のような小さな光が灯った。 「我が目的はふたつ。闘争、勝利。そして我が名を世に轟かせることである」 三つありますけど、とはアナスタシアは言わない。従順なデザインの彼女は、ただうやうやしく頭を下げるのみだ。 「そなたに勝利を持ち帰ろう。待つが良い、アナスタシア」 「光栄に存じます。暗黒騎士ダークヴァルザードギアス様」 案内役のサンプル花子とともに、暗黒騎士ダークヴァルザードギアスはゆっくりとした足取りで外に出ていく。彼女が破れ目を補修したリュックサックの背中を眺め、アナスタシアは目を細めた。 その表情には、画一的なサンプル花子の笑顔とは微かにどこか違う、憧れにも似た喜びがあった。 ▼ ▼ ▼ 最悪は、もう終わったと思ってた。 でも違う。神様なんてきっといないか、いてもあたしの前にバラバラとムカつくものばかり撒いていくような、根性曲がりに違いない。 あたしは、格好悪い大股で歩く。案内役が小走りにあたしを追い越そうとする。腹が立って腹が立って、あたしはさらに早足になる。 なんで、また—— 無表情な顔をにらみつけてやった。その顔は、ママとあの女にそっくりで。 グロリアス・オリュンピア。大会に配備されているのは、大量のサンプル花子。 わかっていたはずなのに、胸のムカつきはなかなか止まらなかった。 でも、それだけならまだいい。まだ我慢できる。 (……あの男!) 壁を殴りたくなって、やめた。あたしは控え室に案内される時、廊下で一戦目の対戦相手——あのふざけた名前の男を今朝のテレビ特番の映像で目にしていた。 どこにでもいるような黒髪の、地味な奴。友だちがこれが彼氏って写真を見せてきたら、後でちょっとした粗探しトークが始まりそうな、そんなくらいの男。 そして、横にサンプル花子を連れて何か話をしていた。やっぱり、よりによって、ママとあの女と同じ顔、同じ髪型の。 最悪。 あたしは案内(というより、無理に先に進んだ)された広いスペースへとたどり着く。観客席のものすごい歓声が、あたしの鼓膜を震わせた。先に着いていた男はなんだかジロジロとこっちを見てくる。 どうせ、こんなガキが出てくるなんて思わなかったんだろう。 わかるはずがない。そのガキがどれだけあんたたちに腹を立てているか。ママと同じ顔の女の子たち。それをいいように扱う奴ら全部をめちゃめちゃに憎んでいるか。 なんだかうるさいアナウンスを聞き流しながら、内心ではもう、イライラが止まらなかった。 そして、戦場への転送が始まった。 第一話 狂い咲きのクリサンセマム 地獄、と告げられていたそこは、確かになんとなくイメージする通りの場所だった。洞窟の中みたいにごつごつとした岩がたくさんあって、足元には血の色をした嫌な臭いのする川が流れている。天井は高くてよく見えない。 大会参加者には三日前に試合の戦場が知らされる。地獄なんてどこで下調べすればいいかわからなかったから、『VR地獄』で疑似体験してイメージトレーニングをした。そんなに予想と外れていないようで、ホッとする。 ところどころに鬼がいて、ガリガリに痩せた亡者(多分)を金棒で叩いたりしている。ただ、あれは実体のない影のようなホログラムのようなもので、別に生きてはいないし、物理的に影響も受けないのだそうだ。夢の国のアトラクションみたいな感じかな、と思う。かなり悪趣味だけど。 あたしは暑いような寒いような、変な空気の中をふらふらとうろついていた。しばらくいると体力が削られる感じがする。早く決着をつけないといけないし……そのためには、あの暗黒騎士とやらを見つけないといけない。 もちろん、ちゃんと備えはしている。あたしはごく小さなエネルギー弾を周りにいくつか巡らせていた。『サンプル・ビット』。威力はほぼ犠牲になるけど、持続力があって、急な攻撃があっても対処できるはずだ。 やがて、岩でごつごつした通路の奥へ奥へとあたしは進んでいた。そろそろ相手と遭遇しかねない、と手に汗がにじむ。でも、あたしの能力はとにかく敵を見つけないとどうしようもない——。 あたしは足を止めた。少し先の広く、ぼんやり明るくなっているところに、人影が見えた。鬼じゃない。人間だ。モッズコート。さっきのあの、対戦相手。こちらに近づいてくる。 襲撃を予感して、あたしは『サンプル・ビット』を解除。一歩後ろに下がる。でも、そいつはすぐには攻撃をしてこなかった。代わりに剣みたいなものをぶん、と振って、大声でこんなことを言い出したのだ。 「よくぞ我が故郷、緋の煉獄ギルガザールに足を踏み入れたな、娘よ! 我は暗黒騎士ダークヴァルザードギアス。血の歓迎を致そう」 (……なんだそれ) あたしは呆れた。なんか、テンション上がりました、みたいな顔してるし。 その剣がダンボールでできているのに気がついた時、あたしはイライラが頂点に達しつつあるのを感じ、思わず顔をめちゃめちゃにしかめた。 最悪。 ◆◆◆◆ 「……ふざけんな」 不機嫌そうな顔をした少女の第一声はそれだった。地獄の景観にいい具合に気分が上がっていた暗黒騎士ダークヴァルザードギアスは、眉をひそめる。 「何それ、バカにしてる? その年でごっこ遊び? そんなダンボールで……」 「我が暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラードを愚弄するか」 暗黒騎士ダークヴァルザードギアスは右手を振るう。おぞましき地獄の岩壁、その突起部がすぱりと切り取られ、枯れた大地に転がった。魔人能力『イーヴァルディの砥石』。彼が手にし、それと信じた物体は、鋭い刃を持つ暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラードと化す。 少女は口をつぐみ、構えるように腰を軽く落とす。暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラードの切っ先が、まっすぐに少女の視線とぶつかった。 「娘、かかってくるが良い。そなたは因縁が導きし我が好敵手と認める!」 「……意味わかんない。あと、娘娘言うな! 『サンプル・シューター』!」 少女の手に何らかのエネルギーが収束。拳大の弾丸が放たれる。暗黒騎士ダークヴァルザードギアスはそれを身をひねって難なくかわし——。 少女は隙を突いたように、だん、と跳躍。見る間に彼女の姿は暗黒騎士ダークヴァルザードギアスの至近へと迫っていた。 「あたしは、阿呂芽ハナだっ!」 伸ばした腕が暗黒騎士ダークヴァルザードギアスの顔に触れようとしたその時。 「『サンプル』……っ!」 慌てて阿呂芽ハナは腕を引いた。暗黒騎士ダークヴァルザードギアスは、暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラードを高く構え、自らの顔を守るように掲げていた。 ▼ ▼ ▼ あたしは跳びすさり、小さく舌打ちをする。多分、あいつはあのダンボールを本物の剣みたいな斬れ味にできるんだ。奴の攻撃は、見た目より強力だと考えた方がいい。少し遅かったらあたしの手にはちょっと愉快じゃないくらいの傷がついていただろう。それにしても。 今、あたしの動きが読まれた? なんで、という疑問は置いておく。そんなことを考える時間はない。最初のコンボを外したのだ。あたしの攻撃は、相手がナメてくれた時が一番ハマりやすいんだけど……どうも無理らしい。 「『神速斬撃・アルグ=ディアス=ゼネキス』」 心底バカみたいな技名のコールとともに、あのダンボール剣が右から大きく振り下ろされる。あたしは軽くそれを避け、『跳び箱』を利用することにした。相手の肩に向け、手を伸ばし——。 ひらり、と相手はあたしの一撃をかわした。まるで、わかっていたかのように。 おかしい。おかしい! あたしは大きくぐらついた姿勢を立て直し、紙一重でなぎ払いを避ける。 「跳び回るのが得意と見えるな、娘。我にはその技は通用せぬぞ」 なんで……。あたしははっとした。『跳び箱』と『サンプル・シューター』は、何かあった時にあたしがいつも使う、基本中の基本の技だ。 あたしが戦うところを、こいつはどこかで見たことがある? さっと頭の中が冷えた。だとしたら……どこまで知っているのか。あたしの手の内を。『コラボ技』を。 どこで……どこで会ったことがあるんだっけ。あたしはそのどこにでもいそうな顔を思い出そうとしたけど、無理だ。わかるはずがない。 もしかしたら、どうにか手を回してわざわざ調べたのかもしれない。そんなに頭が回るような奴にも見えないけど。 その時突然、暗黒騎士野郎はあたしに向けてダンボール剣を投げつけてきた。反射的に手を翳して頭をかばう。 ぺちん。情けない音がして、剣はぽとりと地面に落ちた。暗黒騎士野郎はその隙に、踵を返して奥へ奥へと走り去っている。 ぞっとした。これが本当に剣なら、あたしは腕にひどい怪我を負っていたはずだ。それどころか頭まで……これは、あんまり考えたくない。 能力に制限時間があるのかも。次に、あたしはそれに思い至る。ダンボールはさっき、確かに本物の剣みたいになっていた。今はただの紙だ。長いこと使える能力ではないのかもしれない——あたしの力と同じに。 それなら、どうにかなる! あたしは息を大きく吸うと、奴を追いかけることにした。奥へ、奥へ。地獄の果てまでも奴を追ってやる! ◆◆◆◆ 暗黒騎士ダークヴァルザードギアス……土屋一郎の普段の職業は、都内某所のコンビニ店員である。ある日、彼は勤め先の店の入り口付近で、喧嘩を目撃した。男が三人、対するのは少女がひとり。すぐに少女が倒され終わりだと思った。だが、それは誤りだった。 (『サンプル……』) (ウオオオーッ!) (『……アロー!』) (ウオいぎゃあああアアーッ!!) 鮮やかな動きで、彼女は三人を次々にあしらい、吹き飛ばす。彼は通報することも忘れ、その動きに魅入っていた。 (さっき言ってたやつ。指一本触れず、返品して。分かった?) (わ、分かりましたぁ!!) 一瞬だけ、店内電話に手を伸ばしたままの彼と、少女の目が合った。 そう、行く当てのない阿呂芽ハナがサンプル花子の件で怒り、遭遇した男たちを叩きのめしたその時。土屋一郎は、名もなきコンビニ店員としてその場で全てを見ていた。 とはいえ、それきりだ。少女はそのまま逃走したし、彼も店長に軽く報告をした程度で、何もなくその日は過ぎた。彼にとっては鮮烈な印象を残す出来事であったが、少女がただ居合わせただけの彼の顔を覚えているなどということは、万が一にもないであろう。 ただ、彼の密かにねじ曲がった認識に、ひとつの火が灯った。 あの少女と自分が戦えば、結果はどうだ。彼女の攻撃はどう捌く。自分の剣は届くか。彼はグロリアス・オリュンピアに出場を決めてからも、格好いいポーズの練習とアナスタシアとの訓練の傍ら、密かにイメージトレーニングを重ねていた。 その当の少女と戦うことができようとは、思いもよらなかった。 ◆◆◆◆ 地獄の息苦しい空気の中、暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラードに『相応しい』物を無意識的に探しながら、暗黒騎士ダークヴァルザードギアスは疾駆していた。この場の空気は、煉獄の地に生まれし設定の彼の身体をも蝕む。具体的にはステージギミックとして、1ターンに2程度のスリップダメージが生じる。残りHPには気をつけよう。 『サンプル・シューター』。 あの少女はそうは言っていなかったか。暗黒騎士ダークヴァルザードギアスは、ふと思考を巡らせた。同じ技を、自分は知っている。 ▼ ▼ ▼ あたしが暗黒騎士野郎に追いついた時、奴は山積みの骨が並ぶ血の池のほとりで、針山地獄の長い針を顔を真っ赤にして引き抜いているところだった。地面から顎くらいまである長さの大きな針を持って、ちょっとやり遂げた、みたいな表情で何かぶつぶつとつぶやいている。正直気持ち悪い。 「暗黒騎士なんとかかんとか……あのさ」 あたしは声をかけた。多分、こいつは隙を突いて妙なことをしてくるタイプの敵じゃない。だからって、厄介じゃないわけはないけど。 「聞け。あたしが勝ったら、あの子を解放して」 「あの子とは」 やっぱり、あっさりと会話に乗ってくる。計算なのか、余裕なのか、それとも素なのか。 「あんたと一緒にいた、あの子」 「よもや、我が侍女アナスタシアのことか。あれは自ら我が元に……」 あたしはまたイラついた。何が自らだ。そんなわけない。最悪。最悪だ。 「いいから! そうして」 「それは……いや、ちょっと困る……」 急に普通の人みたいな口を利いたので、あたしは逆にびっくりしてしまった。 「困る、が……否!」 あと、またすぐに変な口調に戻るのもやめてほしい。 「我はあの者に勝利を約束した。であれば、そのような口出し、全くの無意味!」 「いや、意味がわかんない……」 「我は邪法の元に生まれし高貴なる暗黒騎士」 鋭く尖った針が、あたしに向かって突きつけられる。ただでさえ物騒な武器だけど、ダンボールは剣になった。なら、もしかしてこの針も。 「道理に従う理由などなし」 わかんないけど、わかんないけど。 こいつ、お腹の中がグラグラ煮え立つくらいムカつく、ってことはわかった! あたしは、両腕を上に差し上げる。エネルギーのうねりを感じる。攻撃範囲が広すぎてご近所の迷惑になるから、普段あまり使えない手、これならいけるはず。 「『サンプル・レイン』!」 何が読まれているかなんて関係ない。打てる手は全て打つ! 全力であたしは。 こいつを打ちのめしてやる。 ◆◆◆◆ 暗黒騎士ダークヴァルザードギアスが阿呂芽ハナの攻撃に対処できた理由のひとつが、あの日の偶然の出会い。 そしてもうひとつ、『サンプル・シューター』の軌道を読むことができたのは、サンプル花子であるアナスタシアとの訓練の成果だった。 だが、未知の攻撃には彼も怯まざるを得ない。 エネルギーの弾が、流星群のように降り注いだ。ひとつひとつは『サンプル・シューター』よりも小さく、威力も弱い。しかし、速度と量が。 大量の小石の雨に撃たれたような痛みに、暗黒騎士ダークヴァルザードギアスはうめき声を上げる。頭を針……剣でかばうも、攻撃は止まない。避けようと走れば、そこに向けひたすらに降り注ぐ。逃げ惑う彼の行く手を巨大な血の池が阻み、遂には足を止めて耐えるしかなくなった。外れた弾丸は緋い水を跳ね飛ばし、飛沫で地面を焦がす。 やがて雨が止む。目の前には阿呂芽ハナ。胴にハイキックを受け、体勢が崩れる。針を振ろうとし……既に『イーヴァルディの砥石』の効果時間三分が過ぎようとしていることに気づく。 一度剣にした物体は、数時間は暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラードと化す資格を失う。別に、他の武器を使うことによるデメリットは何もない。だが、彼は信じていた。暗黒騎士ダークヴァルザードギアスは、暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラードをのみ用い戦う、最強の騎士であるのだと。彼は針を自ら手放し、地面にからからと転がした。予想外の動きだったか、阿呂芽ハナは少し彼から距離を取った。 阿呂芽ハナが岩壁に手を突き、そこから大きく跳躍する。軌道は、読める。一度かわし、その隙にまた『別の』暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラードを——。 彼の瞬時の計算は、裏切られた。阿呂芽ハナは、空中で小さなエネルギー弾を放ち、反動で軌道を変え、急降下する。間に合わない。 空から降ってきた阿呂芽ハナは彼の額に手で触れた、その一瞬を逃さなかった。 「『サンプル・シューター』」 至近距離の、全力殴打に近い威力。暗黒騎士ダークヴァルザードギアスの身体は弾けるように倒れ込んだ。 そのまま血の池へ転がり落ちそうになり、地面に爪を立ててこらえる。左腕は緋の水に浸かり、煉獄の地に生まれし設定の彼の身体をも蝕む酸に灼かれた。 彼は情けない悲鳴が漏れるのを噛み殺し、どうにか起き上がろうとして、ふらふらと骨の山に倒れ伏した。半身は崩れ落ちる白い人骨に埋もれ、一瞬軽く意識が飛びかける。 「……ひとつ聞かせてよ。あんた、なんでそんなにあの……あの子にこだわるの」 明滅する視界に、阿呂芽ハナのシルエットが見える。朦朧とし、やや素に——土屋一郎の意識に戻りながら彼は答えた。 「決まってる。あの子は……あの者は」 少女のシルエットに、アナスタシアの姿が重なる。そして、ふたりきりの訓練時に交わした会話が、突然稲妻のようにフラッシュバックした。 ◆◆◆◆ (私の『サンプル・シューター』は、エネルギー切れになるとおよそ三分間撃つことがかなわなくなります) (なるほど。では訓練は休憩ののちに……) (いいえ) アナスタシアは、サンプル花子らしからぬ軽く熱のこもった口調でこう彼に告げた。 (今、今こそが私を倒すべき時です。この機を逃してはなりません。暗黒騎士ダークヴァルザードギアス様。実戦は) アナスタシアにまだ名がなかった頃、彼女は嗜虐趣味の元主に虐待を受けていたらしい。時折まるで人のような顔をするのは、その傷跡の影響か、あるいは、怒りの。 (時間を止めてはくれません) 暗黒騎士ダークヴァルザードギアスは、手にした30センチ定規……もとい暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラードを忠実なる侍女の首筋に向けた。彼女は、満足げに薄く微笑んだように見えた。 ◆◆◆◆ 現実の彼は、頭を押さえながら起き上がる。酸に灼けた左手は、動かそうとすると裂けるような痛みが走る。 阿呂芽ハナは、時間を稼ごうとしている。もしあの能力がアナスタシアと同質のものであるのならば、エネルギー切れをも同様に起こしている可能性がある。 「あの者は、俺の……我が名を初めて。初めて呼んでくれた」 (仰せのままに、暗黒騎士ダークヴァルザードギアス様) 誰にも見せなかった創作ノート。鉛筆書きの設定に支配された、ひとりきりの死んだ心に、表に出せぬ歪んだ認識に、彼女は歩み寄ってくれた。 「ならば我は、あの者に報いねばならぬ。勝利の誓いを守らねばならぬ」 彼の孤独な世界は、あの瞬間微かに救われたのだ。 滑稽でも構わない。無益でも構わない。短い間だけでも、共に歩くと決めた。 彼は暗黒騎士ダークヴァルザードギアス。邪法の元に生まれし高貴なる存在。 だから、貫いてみせる。 彼は拾った大腿骨と思しき長い骨を、右手でしっかりと握り締めていた。 『イーヴァルディの砥石』。彼がそう信じれば、触れたものは三分間に限り全て本物の魔剣と化す。 (こは剣(つるぎ)。長き刃(やいば)と頼もしき柄持つ剣(つるぎ)。その刃(やいば)は全てを切り裂き、全てを穢(けが)す) 骨は……剣は唸りを上げ、阿呂芽ハナへと襲いかかる。 暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラード。 彼は、信じた。 ▼ ▼ ▼ ヤバい。まずい。時間が。 あたしの力は、まだ回復していない。大技を撃つと減りが早い。時間を稼ごうとしたのも、バレている。歯を食いしばりながら、刃(骨だけど)をかわす。一撃、二撃。牽制の足払いを避け、身を沈め——。 「『雷鳴刺突・ギムシュトラウス=マギナ』」 鋭い突きが、あたしの……あたしの額目がけて。 ダメだ。頭は、ダメ。 あたしは反射的に腕で頭を抱え込む。鋭い痛みが走った。 袖がざくりと裂け、赤い血がだらだらと流れていた。同時に、揺れるような目まいがする。吐き気がする。心臓はばくばくと、うるさい。 うるさい。うるさい。うるさい。 なんであたしの邪魔をする! 最悪な状況。最悪な奴ら。あたしはただ、前に進みたいだけなのに。 「行け、ダムギルスヴァリアグラード!」 暗黒騎士野郎が叫ぶ。耳がわんわんする。気持ち悪い。 「『灰燼流星・グレオリザイン=ゲネス』」 空高く、何かが投げ放たれる。それは、あたしの『サンプル・レイン』に少しだけ似ていた。骨が、何本もの骨があたし目がけて降ってくる。さっき拾ったんだろう。なんか剣の名前を大事そうに呼んでいたわりには、何本あってもいいらしい。最悪の攻撃だ。あたしは頭を守ってうずくまりかけ——。 違う。 あたしには、力がある。ママに守られるままの、何もできない子供じゃない。 (最悪――なのは、ここまでだ……!) 手を差し上げる。エネルギーがみなぎる。三分間は、経っていた。 「『サンプル・シェード』!」 エネルギーは、あたしを屋根のように包む。それは、降ってくる刃をいくつか弾いて消えた。消費は大きくて効果時間はごく短い。でも、それで十分。 あたしは嫌な気分をこらえながら、風のように走り込んできた暗黒騎士野郎の刃を避け。 「『サンプル』……」 「そっ……『蒼穹連撃・フィズ=ガルナ=ヴァルガナール』」 血の池でボロボロにダメージを受けて、だらりと垂れ下がっていたはずの左手から、二度目の斬撃が走った。あたしは、読みそこねた。 脇腹が、裂ける。血が噴き出す。奴の爛れた左手には、短くて細い骨が握られていた。ものすごく痛そうな涙目。……あたしだって、泣き出しそうなくらい痛い。 ずるい……ずるい。さっきといい、今回といい。なんで魔剣的なものが増えていいのか、意味がわからない。最悪。最悪だ。 あたしはがくりと膝をつく。力が、血とともに抜けていく。 「降伏を勧めるぞ、娘」 奴の声は震えていた。誰が、と言おうとして、あたしの声もかすれているのに気づく。 「誰が、降伏、なんて……」 あたしはまだ全部を出し切っていない。一試合目から手の内を全部見せたらその後がキツい、なんて計算していたわけじゃないけど。 奥の手を抱え落ちするのは最悪だ。 「『サンプル』……」 暗黒騎士が身構える。 「『シューター』!」 掌から放った光の弾は、まっすぐに標的へ飛んでいく。 分かってる、どうせこれも回避するんだ。この距離じゃ通じないのはもう理解してる。 予想通りに相手は紙一重でその弾を避けた。ここだ! 「『リバース』!」 あたしは力の限り叫んで掌を返し、腕を曲げて、放った弾丸を引き寄せた。 『サンプル・シューター』の軌道はVの字を描いて、暗黒騎士野郎の無防備な背中に炸裂する。背負ったリュックサックが破損して、中身がばらばらと宙を舞った。 取り回しのいい隠し技。あたしのとっておきだ。そして。 「『サンプル』」 これで、仕留める。 「『アロー』!」 ふらついた暗黒騎士野郎に、あたしは全力を込めたエネルギーの矢を放つ。奴はあっけなく吹っ飛ばされ、もう一度血の池のほとりに倒れ込んだ。 あたしは、荒い息を吐く。ぐらぐらするような目まいがまた戻ってくる。今ので力はもう尽きてしまった。痛みと流血もきつい。これで倒せなければ後はない。 そのまま倒れてろ、と心の中で願う。 けど、奴は起き上がった。 額には脂汗、膝はがくがく震えて、肩で大きく息をしながら。 必死で、みっともなくて、全然暗黒騎士っぽくない。 この戦いはきっと、あたしの方がずっと死に物狂いなんだと思っていた。けど、その姿は今のあたしとなんの違いもないように見えた。 ……同じ状況なら、まだいける。エネルギーがなくたって、できる限りやってやる。 あたしが脇腹から流れる血に手を濡らしながら歩き出した、その時だった。 「『降刃……招来・ラムザル=デスレイド』」 斬撃を警戒したあたしの脚に、鋭い痛みが突き刺さった。 ◆◆◆◆ 暗黒騎士ダークヴァルザードギアスは、地面を蹴りつけたその足で大きく数歩踏み込んだ。蹴り飛ばしたのは、先ほど宙に投げ飛ばし、阿呂芽ハナに弾き飛ばされた短い骨……未だ暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラードのままの一本。それはあやまたず少女のふくらはぎを傷つけた。 一瞬、阿呂芽ハナは驚いたように己の脚を見下ろす。その隙が、彼の求めていた好機。 「『斬華』……ゲホッ、『真撃・エグゼス=』」 彼は痛みに耐えながらも、地獄の空気を震わせんばかりに叫んだ。 「『ガルズグリッド』!」 暗黒騎士ダークヴァルザードギアスである己を、貫くために。 袈裟懸けの剣閃に、鮮血の花が咲く。 阿呂芽ハナは、胴を大きく切り裂かれながら、悔しげに顔をぐしゃぐしゃと歪め、やがてゆっくりと倒れ伏した。 「……我が名を呼べ。アナスタシア」 彼はかすれた声でつぶやく。 この戦の模様は全国に中継をされているが、観客の反応を彼が知ることは叶わない。 だが、それでも、忠実なる侍女は彼の真の名を呼ぶだろう。無感情な声に無上の喜びを込め、彼を呼ぶだろう。 暗黒騎士ダークヴァルザードギアス。 彼は、信じた。 ◆◆◆◆ 『阿呂芽ハナ、戦闘不能につき、勝者、暗黒騎士ダークヴァルザードギアス!』 勝者は、血に濡れた暗黒瘴気剣ダムギルスヴァリアグラードを……ただの一本の人骨を、地獄の空に突き上げた。 王女は顔を輝かせ、観覧席からほう、と小さく満足のため息をついた。 そして控え室でひとり見守る侍女(アナスタシア)は、静かな拍手を送った。主の名を小さく呼び続けながら。 ▼ ▼ ▼ ……あたしの頭の中には、ママがいる。 それはただの例えで、別にあのママ本人が元気に生きていたり、なんてことではない。ついでに、あたしの心の中にママは生きている、とかそういう泣かせる話なんかでもない。 あの事故の日、あたしは頭を強く打って、脳の機能の一部が麻痺していたらしい。昔の医療技術だったら、一生寝たきりで終わるところだったのだとか。でも、今は違う。 今は、サンプル花子がいる。 造られた女の子。人間とほとんど同じ身体のつくり。でも、人間と同じ権利なんてない。ただの商品。 ……彼女らの量産で、医学は——特に、脳の部分移植という分野は飛躍的に進歩したのだそうだ。そんな進歩、いらなかったのに。 あたしの頭の中には、ママがいる。 あたしは、移植されたママの脳の一部と、そこに宿っていた力を受け入れ、そして無事に目が覚めた。手術跡が残ったのが嫌で、見えないように髪を伸ばしたりなんかもした。 最悪だ。最悪にもほどがある……昔話だ。 ▼ ▼ ▼ 目が覚めた。見慣れない白い天井に不思議な気分になる。痛みはもうない。死んだ気分はあまりしないから、多分どうにか生きたまま治してもらえたのだろう。そういうことにする。 消毒薬の匂いのするベッドの上は、嫌な記憶を思い出す。あたしは周りのスタッフが止めるのを振り切ってさっさと起き上がり、医務室を後にした。と。 「……最悪」 また、思わずつぶやいてしまった。だってよりによって、あたしを切り刻んだ相手とまたすぐ鉢合わせするなんてこと、ある? 暗黒騎士……なんとかギアスは、あのサンプル花子と一緒に廊下を歩いていたようだった。もしかしたら、このバッティングを避けるためにみんな止めたのかもしれないけど、もう遅い。ばらばらと、警護の人やサンプル花子たちが集まってくる。 あーあー、あっちもなんだか気まずい顔をしてる。あたしは、意を決して話しかけた。 「……あんたさ」 「何用だ」 「あんたじゃない。そっちの子の方」 サンプル花子は、小さく首を傾げた。やっぱり、腹が立つくらいにそっくりだ。 「なんでそんな頭おかしい奴と一緒にいるわけ」 暗黒騎士野郎は、我を愚弄するかとかなんとか言い出したけど、知ったことじゃない。あたしは、この子と話がしたかったのだ。 あたしは何かを期待していた。お買い上げいただきましたから、とか、そう設定(インプット)されていますから、とか、そういうお決まり以外の答えを。 「暗黒騎士ダークヴァルザードギアス様は」 名前、いちいちフルネームで呼ぶのはどうにかしてほしい。長い。 「私に名前を下さいましたから」 ……ああ。 あたしはまぶしい気分になって目を細めた。 バカになんてできない。暗黒騎士野郎の気持ちを笑うことは、あたしのママへの気持ちを侮辱することになる。この子の気持ちを笑うことは、ママのあたしへの気持ちを疑うことになる。 アナスタシア、って、奴は呼んでいたっけ。 「あっそ。それじゃ」 あたしは小さく手を振って、ふたりに……暗黒騎士ダークヴァルザードギアスと、アナスタシアに背を向けた。 あたしの名前。阿呂芽ハナ。 呼んでくれるのは、友だちと、それから——。 ▼ ▼ ▼ 「おかえりなさい、ハナ」 あたしは、仏頂面でアパートに帰宅した。やっぱり、できれば遭遇したくはなかったけど、でも仕方がない。というか、なんでこの家に帰ってしまったのか、自分でもよくわからない。 あたしの母親を名乗る女は、今日もエプロンに三角巾姿だ。 「中継を見ていましたよ。驚きましたが、お疲れ様でした。ゆっくり休んで——」 「治療は受けたから平気。洗濯物置きに来ただけ」 「でも」 「平気ったら平気」 中継。そうだ。あたしのみっともない負け姿が全国に知れ渡ってるのは辛いものがあるけど、仕方がない。今日は大会の人に送ってもらったからいいとして、明日からは道でひそひそ噂をされたりもするんだろう。 あたしは負けて、賞金も、願いも、手に入れ損ねたのだから。 急に、何か熱いものがこみ上げてくるのを感じた。この女の前で泣くなんて、プライドが許さないからこらえる。 あたしは自立に失敗した。本当の両親のことは何もわからない。最悪の状況は、何も変わらない。 でも。でも、だ。 あたしは、確かに一度立ち上がった。なら、何度だってやれるはずだ。諦めたりなんかしたくない。いつか、望むところにたどり着く。 あの女が、あたしをじっと見つめていた。嫌な視線。けど、でも、どうしてだろう。 あたしは、ほんの少しだけ気まぐれにガードを下げてもいいような、そんな気持ちになっていた。 「……やっぱり、ちょっと休んでく」 「それがいいでしょう。お茶を淹れましょうか」 「別にいらない」 あたしは荷物をどさりと下ろす。 最悪なのは、あの時まで。そうだ。そう決めたのだ。 「……ただいま」 ◆◆◆◆ 「お疲れ様でした。暗黒騎士ダークヴァルザードギアス様」 「うむ。地の利が我にあったとはいえ、なかなかの戦であった。阿呂芽ハナ。我が好敵手として相応しき相手であったことよ」 「何よりでございます」 時間は少々巻き戻る。大会医療室内での出来事だ。暗黒騎士ダークヴァルザードギアスの負傷は既に治療済み。アナスタシアは無残な状態のモッズコートを見てから軽く目を伏せ、うなずく。 「しかし、まだ足りぬ。次の戦。次の次の戦。さらに次。全てに勝ち名乗りを上げ、この名を世に知らしめる」 「ええ」 「我が呪われし血が疼く。百年前、グレアラムの墓所にて幽鬼どもと剣を交えた時以来のことよ」 アナスタシアは、あ、わりと長生きの設定なんですね、などとは言わない。ただ、目を細め主の話に懸命に耳を傾ける。 「次の勝利もまた、そなたに約束しよう。アナスタシア」 「はい。暗黒騎士ダークヴァルザードギアス様」 狂った主従は、それだけでただ幸せだった。 第一話 魔境・緋の煉獄ギルガザール 完
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フォースシリーズに登場する組織で『殺し屋ギャラクシー』の設定を使った緋黒の短編(長編?)小説。 タイトルは不明。 というよりそもそも考えていないと見るのが妥当。 SSの名前の由来 SSとはスペースシャトルの頭文字から来ている。 キャラクターの名前もスペースシャトルから来ている。 登場キャラクター 部隊SS ディスカバリー エンデバー アトランティス チャレンジャー コロンビア
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元スレURL 【SS】 妄想族の集い 概要 大胆な妄想は大和撫子枠の特権 タグ ^園田海未 ^桜坂しずく ^黒澤ダイヤ ^宮下愛 ^短編 ^コメディ 名前 コメント
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SS張りましょうか 絶望マンSS ゆーちゃSS
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ゲームのSSについて。 1.まずは下準備。ゲーム内でF8を押すか、ウィンドウをクリック 2.システムを押したら、オプションを選択 3.オプションを選択したら、ゲーム項目になっている事を確認し、画面をスクロールさせて 出力 の項目で画像形式をJPEGにする。 画像形式についてはSS豆知識 4.キーボードからprintscreenキーを押すと、スクリーンショットが取れた旨がシステムログに出る。 5.デスクトップから、エピックのショートカットを探す。 6.ショートカットを右クリックして、プロパティを選択。 7.プロパティが出たら、ショートカットのタブに切り替え、リンク先を探すをクリック。 8.エピックがインストールされているフォルダが出るので、そこに撮影した画像が入ってるはず。